新評論
性エネルギーの研究を行い、生前は評価されることがなく不遇の内に没したライヒ。彼は独自の視点から数々の本を記したが、本書はその中でも一風変わった仕立てになっている。それもそのはず、人間がいかに小人物的であるかを指摘し、どれだけ愚かで自己中心的であるかを述べている本書は、実はナチス批判にもなっている風刺本なのである。彼は単純な政治活動家ではなかったが、人々の固定観念を打ち砕こうとしたという意味においては、まさに革命家であった。そんなライヒの価値観は、当然ナチスから疎んじられるものであったから、ライヒはナチスから逃れるために各国を転々とするしかなかった。ライヒの性理論は、ナチスの様な存在が大衆の支持を圧倒的に受けるような状況についても、性エネルギーと関係していると説いていた。大衆や政治の動きがセックスと深く関係しているという視点は、とてもユニークでおもしろいものだと思う。個人のレベルで考えていないところも、ライヒという人間のキャパシティーの深さを感じさせる。
単行本
判型:B6判
タテ198mm × ヨコ138mm
216頁
2017年2月24日
ISBN:9784794810618