H・G・レーナー
誠信書房
人間関係では必ず沸き上がっている怒りの感情は、普通、押さえ付けるか爆発させるかなど持て余してしまいがちである。まず、たいていの人はネガティブな感情として、自分自身でも否定的にとらえることが多いだろう。ところが本書では違うのである。怒りそのものは、ネガティブではないと言う。それを聞くだけで何か解放されるような感じがするのは、それだけ現代人が日頃怒りを貯め込んでいるという事か。著者は怒りをエネルギーとしてとらえ、関係性について従来とは違う視点を与えている。自分の中にあるネガティブな感情を直視しようとしても、その感情を生み出しているのは自分の心のわけだから、当然、抵抗が生まれやすい。しかし、本書はその抵抗をはずすような観点を与えてくれる。人間関係をダンスとしてとらえている所など、なるほどと、うなづける所が多い。いかにうまくダンスを踊るか?という視点からなら、何かうまくいきそうだ。怒りについてだけではなく、同じシリーズで親密さについて述べた『親密さのダンス』(誠信書房 (1994/01)もあり、関係性を考える上でどちらも興味深い。
2002年6月1日
ISBN:9784414325232