ジョエル・L・ホイットン 他
人文書院
禅には「未生以前」という言葉がある。自分の両親が生まれる以前の自分とは何であったのかを考えさせる考案である。「生まれ生まれ生まれ生まれて生の始めに暗く、死に死に死に死んで死の終わりに冥し」という空海の言葉もあるように、人は何度も生まれては死ぬをくり返しているという考えが、古今東西さまざまな文化に伝わっている。生まれ変わりはないと主張しているキリスト教でさえ、かつて一部の派では輪廻転生の思想が息づいていたとされている。本書は、精神科医が催眠療法のさなかに、偶然に患者が語った前世の記憶を記したものである。ニューエイジ思想の中でも、特に前世については非常に大きな関心を集めた。「私」とは何かを考える時、人との関係性を理解したい時、前世の存在がまた違ったものさしを与えてくれる。しかし考えてみると、自分の両親を100代さかのぼればあっと言う間に、人口以上の人数になることは、計算上でもすぐわかることである。そういう意味では、本来、ありとあらゆる人と何らかの関係をもった上で、私たちが生まれてきていると言うことができるだろう。
単行本
判型:B6判
タテ186mm × ヨコ128mm
284頁
1989年7月1日
ISBN:9784409330364