岩波書店
神々の間の戦いを描いているインドの古典である本書。ヒンズー教の世界観や神々の考え方を伝えてくれる貴重な聖典である。この物語に登場する神々は、家族や親戚たちと戦いを交える宿命を持っている。この世はそのような矛盾に満ちた世界であるのだ。ある日戦いにつかれた心優しい戦士は、「家族や親戚と争う位なら自分が殺される方を選びたい」とクリシュナに問いかける。道義的に考えればそれはたいへん立派な愛に満ちた決断である。しかし、クリシュナは「それは弱者の考え方である、卑小な心の弱さを捨てて立ち上がれ」とさとすのだ。このことがどのような意味を表しているのかは読む人の心にまかせよう。バガヴァッド・ギータは物語の形を取っているが、まぎれもない宇宙の真理を説く教典なのだから。芭蕉、一茶、世阿弥などが作り上げた世界観が、日本人の魂に根付いている思想だとすると、『バガヴァッドギータ』こそはインド人の魂にの根元であると言えるだろう。インドの国や人々が独特の魅力を放ち、今も世界中の人々を惹きつける理由はこんなところにあるのかもしれない。文庫。
文庫
判型:文庫判
タテ146mm × ヨコ106mm
270頁
1992年3月16日
ISBN:9784003206812