アブラハム・H・マスロー 著、上田吉一 訳
誠信書房
マスローは、「自己実現」という言葉や「成長の五段階欲求」などを提唱した人として知られている。ところが、このような言葉がどんどん一人歩きしている。何かが違う。それがテクニックや処方箋のように使われだしたとたん、オリジナルなソースが失われる。彼の人間を見つめる目の温かさ、未来と可能性を信じる心。当時の心理学界にあって、たった一人で「健康な人を研究してみよう」と思いついた人なのだ。健康な人は、「至高体験」というものをしばしば経験することを彼は挙げている。至高体験というのは、高次の愛情、美的認知、創造的瞬間などに表れる無意図的な幸福感を総称して、名づけられたものだ。ふとした瞬間に、世界がすばらしく美しいと気づく時。自分と世界の境界が無くなる時。それが至高体験だ。
《目次》
第一部 心理学的領域の拡大
1 緒言 健康の心理学へ
2 心理学が実存主義者から学び得るもの
第二部 成長と動機
3 欠乏動機と成長動機
4 防衛と成長
5 知ろうとする欲求と知ることのおそれ
第三部 成長と認識
6 至高経験における生命の認識
7 激しい同一性の経験としての至高経験
8 B認識の危険性
9 概括されることに対する抵抗
第四部 創造性
10 自己実現する人における創造性
第五部 価値
11 心理学のデータと人間の価値
12 価値、成長、健康
13 環境を超えるものとしての健康
第六部 今後の課題
14 成長と自己実現の心理学に関する基本的命題
単行本(ハードカバー)
判型:四六判
タテ190mm × ヨコ134mm
342頁
1998年9月15日
ISBN:9784414304107