現代思潮新社
約200年のバレエの歴史で、男性ダンサーとして異様な才能を発揮したニジンスキー。その跳躍力、幻想世界の表現などは鬼気迫るものがあった。しかし、晩年は精神を患い狂気に沈んだ。その頃日記として書かれた『ニジンスキーの手記』(新書館 刊)は、狂気が文脈の中に浮かびあがる様子が描かれている。私達が認識している暗黙のルールは次元をかえれば矛盾だらけであり、狂気とされたニジンスキーには、ひどく異様なものに見えるのだ。枠を超えた者にのみ開かれる純化された「現実」が綴られている。そのニジンスキーの生涯を共にした妻ロモラが、彼の発狂から死までを綴った『その後のニジンスキー』も合わせて読みたい本だ。「病気」の人間とその病人を看護した記録として、そしてニジンスキーの見神論の陰画としてもう一つの現実が描かれている。
単行本
判型:B6判
タテ190mm × ヨコ132mm
299頁
1977年6月1日
ISBN:9784329000682