川村湊
(株)河出書房新社
摩多羅神という神の姿をつかむことはひどく難しい。茗荷と笹を持った童子2人を従え、小鼓を打つ貴人。あるいは天台宗系の寺院の後戸「うしろど」を守り、鬼門から来る悪いものを防ぐ神。はたまた猿楽法師たちの芸能の守護神として激しく躍動し、踊り狂う力そのもの。芸能、信仰と深く結びつき、秘仏(秘神)としてめったに見ることのかなわぬものとされながら、それは確かに存在し、時代によって様々な変容を遂げてきた。著者は日光や上野、平泉など各地をめぐり、その足跡を追っていくのだが、観光地としても有名な寺院に見知らぬ秘仏が祀られていたことに驚かされる。摩多羅神は案外身近なところに存在し、熱狂と恍惚の化身として私たちの宗教観の源流に身を潜めているのかもしれない。
単行本
判型:B6判
タテ195mm × ヨコ140mm
248頁
2017年12月27日
ISBN:9784309227245