紀伊國屋書店出版部
進化や生き残りのための遺伝子の新たな性質を発見して世間をおどろかさせた本書。従来は道徳的観点から捕らえられていた人間のふるまいも、生き残りのための遺伝子のたくらみであったいうこの理論も、現在では教科書の中で紹介されるぐらい一般的になってきているが、発表当時はそれまでの価値観をひっくかえすような斬新さを持っていた。著者の説によれば、人間は遺伝子の乗り物にしかすぎない。こうなると、自分が、自分がと思いながら生きている人間が、滑稽にすら見えてくる。いったい何が自分の意志なのか、まったく見当がつかなくなってくる。最先端の科学の中で、同じ様に「私」という存在を揺るがせているものに、「脳科学」と「免疫」があるが、今後ますます科学は不思議な領域に入って行くだろう事を予感させる。さて、人間を乗り物にして、遺伝子はどこに向かっているのだろう。宇宙は何をたくらんでいるのだろう。時には、遺伝子の気持ちになって、あれこれ考えてみるのもおもしろいかもしれない。
単行本(ハードカバー)
判型:A5判(148×210)
584頁
2018年2月26日
ISBN:9784314011532