新潮社
まえがきにあるように、「精神の考古学」という言葉は思想家 吉本隆明によるものだ。それは、遠い過去の時代に人間はどんな精神を持ち、何を考えていたのかを知るために、未開的な知恵が残る場でその技法を直接体得し、まるで考古学のようにそれらを掘り起こすことだという。大学院生であった著者による、四十数年前のネパールでのゾクチェンのヨーガの詳細な実践体験記、そして、その後の時間を経た人類学者としての思考、本書ではそれらが自在に編み上げられているようだ。仏教の一部のように捉えられがちなゾクチェンの、他の教えとの大きな違い、その違いは土地よって育まれたものだということ、そしてそれが政府に土地を追われたことで失われていくこと。弟子である著者が直接聞いて書き記した、チベットで生まれ育ったゾクチェンの師の言葉には、私たち人間の行為についてを深く考えさせられる。
単行本
判型:46変判
432頁
2024年2月15日
ISBN:9784103659037