「遊ぶものは神である。神のみが、遊ぶことができた。遊は絶対の自由と、ゆたかな創造の世界である。それは神の世界に外ならない。この神の世界にかかわるとき、人もともに遊ぶことができた。神とともにというよりも、神によりてというべきかも知れない――」。白川静の初随筆集『文字逍遥』に収録されたこの『遊字論』は、「あそび」の本質をもっとも鋭く表しているのではないだろうか。膨大な文字と向き合ってきた白川静が、ことのほか愛した字が「遊」と「狂」であったという。神という大いなる宇宙と一体になって遊ぶことができた時、天と地をつないでなされる仕事は、世界を創造する大きな力となるかもしれない。
文庫
443頁
1994年4月1日