近藤滋
みすず書房
エッシャーというと、目の錯覚を利用し、現実には存在しえない光景を描き出す、だまし絵の巨匠というイメージが強い。しかし一般的に見られる錯視図形と、エッシャーの作品との間には大きな違いがあるのだという。著者はその違いを自然さ、違和感の無さだとし、それを成立させるために、画家が仕掛けたさまざまなからくりを読み解いていく。科学的なその視点は、画家の思考過程を辿るようでもあり、謎解きの冒険を進めていくような楽しさに満ちている。
【目次】
第1章 見過ごされていたトリック
第2章 《物見の塔》――演技する人々
第3章 《描く手》――できるはずのない影
第4章 消えた風景画
第5章 《上昇と下降》――見えない継ぎ目
第6章 《画廊》――異世界のつなぎ方
第7章 遠近法の弱点
第8章 《滝》――遠近法の限界を超える
あとがき
画像出典
参考文献
【著者紹介】
近藤滋 こんどう・しげる
1959年生まれ。1988年、京都大学医学研究科博士課程修了。大阪大学大学院生命機能研究科教授をへて、2024年から国立遺伝学研究所所長。専門は発生学、理論生物学。生物の縞模様が、分子の反応が作る「波」であるというアラン・チューリングの予測を実証した。著書に『波紋と螺旋とフィボナッチ』(学研メディカル秀潤社、2013)、『いきもののカタチ』(学研プラス、2021)がある。
単行本
判型:四六判
208頁
2024年12月10日
ISBN:9784622097310